「西の富士、東の筑波―。」
その山容の美しさから、富士山と並び称されてきた筑波山。広大な関東平野の北辺に双峰を突き出したその姿は、茨城県民にとってある種の象徴的な光景でもあります。その、筑波山を御神体とするのが、筑波山神社。創建時期は不明で、有史以前から信仰の対象になってきたと考えられており、中腹にある「拝殿」と、男体山・女体山それぞれの山頂にある「本殿」の構成になっており、筑波山全体を神体山として祀っています。
このような方にオススメします!
御祭神の伊弉諾尊(イザナギノミコト)・伊弉冊尊(イザナミノミコト)は、日本人の祖神(おやがみ)として古事記や日本書紀に記されています。二神が結婚して神々を産み、国産みをしたことから、「縁結び、夫婦和合、家内安全」といった御神徳が有名です。筑波山神社で結婚式というのもオススメです。
また、国産みをした観点から、国家運営や社運隆盛の御利益もあり、地域の経営者や商店主さんからの支持も篤く、商売繁盛の御祈祷をお願いするのもオススメです。
開運データ
主祭神 | 筑波男大神 伊弉諾尊 筑波女大神 伊弉冊尊 |
御利益 | 縁結び 夫婦円満 商売繁盛 |
創建 | 不詳(有史以前の説あり) |
社格等 | 式内社(名神大1座、小1座) 旧県社 別表神社 |
札所等 | 東国三社 |
主な神事 | 御座替祭(4月1日と11月1日) |
文化財 | 神橋(茨城県指定文化財) 随神門(つくば市指定文化財) |
山頂の本殿にお参りしよう!
筑波山神社と聞いてイメージするのが、大鳥居から入って石段を登った先にある、立派な門構えと荘厳な雰囲気の御社。実は、こちらはあくまで拝殿であり、本殿はここにはありません。一般的な神社では、拝殿のすぐ裏手に本殿があることがしばしばですが、筑波山神社は山全体が御神体。なので、本殿は、筑波山の山頂に鎮座されているのです。
また、筑波山は言わずと知れた双耳峰。西側に男体山、東側に女体山が並んでおり、双峰合わせて筑波山と呼ばれています。筑波山神社の御神体は、男体山山頂に男大神である伊弉諾尊(イザナギノミコト)、女体山山頂に女大神である伊弉冊尊(イザナミノミコト)がそれぞれ本殿に祀られています。
山頂へのアクセスは複数の方法あり
徒歩で登る
かつては、男体山側は非常に険しく、また神の峰として登山が禁止されており、一方の女体山側は解放地として多くの男女が集い様々な祭祀が行われていたそうです。現在は、男体山・女体山ともに徒歩での登山ルートがあり、比較的軽装でも登山が可能となっています。男体山には筑波山神社のすぐ裏手から登山道があります。女体山に向かうルートも筑波山神社からありますが、距離が長いため、ある程度経験がある方向きと言えます。女体山に直接登るなら、つつじヶ丘のロープウェイ乗り場から登るルートがおすすめです。なお、山頂と山頂には往来できるルートがありますので、男体山から登って、女体山山頂に行き、また男体山から下山する、というルートで問題ありません。
ケーブルカーで登る
筑波山神社拝殿に向かって左手の方向に進んで行くと、ケーブルカーの駅「宮脇駅」があります。ここからケーブルカーで「筑波山頂駅」まで約8分で到着します。なお、駅名に山頂とはつきますが、到着するのは山頂付近の御幸ヶ原というエリア。レストランやお土産売り場の並ぶ観光スポットです。本当の男体山山頂はすぐそこに見えていますが、ちょっとだけ(約300m・約15分)登山する必要があります。女体山山頂には、山頂連絡路を通り、約550m・約15分で行くことが出来ます。
ロープウェーで登る
女体山中腹の「つつじヶ丘駅」からはロープウェーで山頂を目指すことができます。約6分で「女体山駅」に到着します。この到着駅は、ケーブルカーの到着駅のある御幸ヶ原とは全く別の場所なので要注意。女体山の山頂近く、標高840m付近に女体山駅はあります。駅からは徒歩で約5分ほどで女体山山頂に登頂することができます。男体山山頂へは、山頂連絡路を通って約30分程で行くことができます。
天候や時刻、体調にも注意して手段を選ぼう
若さを頼りに着の身着のままで登山開始。これは絶対にやめましょう。登山開始5分で後悔します。
天気予報や帰りの時間なども計算し、余裕をもって登頂手段を選びましょう。無理をせず、ケーブルカーやロープウェーを使うのも大切です。ただ、個人的には徒歩で登る気持ちよさも一度味わってみてもらいたいものです。その場合も、登りは徒歩で、帰りはケーブルカーで、といった具合に無理をせずにやってみてください。
ぜひ、山頂まで登り、伊弉諾尊と伊弉冊尊に直接参拝し、縁結びや夫婦円満の御祈願をしましょう!
常陸国風土記に見る筑波山
西の富士、東の筑波の昔話
奈良時代に編纂された『常陸国風土記』に、神祖の尊が富士山と筑波山を訪ねた話が記載され、今に伝えられています。興味深いお話ですので、ご紹介いたします!
むかし、祖先の大神が各地の神様を訪ね歩いたとき
駿河の国で日が暮れ、富士の神に宿を頼みました。
すると富士の神は
「今夜は新嘗祭で家中の者が物忌みをしているので
今夜だけはご勘弁ください」
と、お断りしたため、大神は嘆きになりました。
次に大神は筑波の神に宿を頼みました。
すると筑波の神は
「新嘗祭ですがあえてお断りはできますまい」と
大神をもてなしました。
このことから富士山は雪の積もる山となり
筑波山は1年中、雪が降らず、
人の行き交う山となったそうです。
『常陸国風土記』(筑波郡の条)
富士山の神が断ったものを、筑波山の神が歓待したということで、祖先の大神がとても喜んで筑波山を優遇したというお話です。もちろん神話の一部ではありますが、平安時代の筑波山では嬥歌(かがい=歌垣)が頻繁に行われていたのは事実であり、それ以前の古代から、筑波山が男女の縁を結ぶ場として機能していたことも想像に難くありません。
常陸国風土記の記載内容原文
筑波郡の条
古老の曰へらく、昔、神祖の尊、諸神の処に巡り行でまししに、駿河の国福慈の岳に至りたまひて、卒に日暮に遇ひ、寓宿を請欲ひたまひき。此の時、福慈の神答へて曰へらく、「新粟の初嘗して、家内諱忌せり。今日の間は、冀はくは許し堪へじ。」とまをしき。是に、神祖の尊、恨み泣きて詈告りたまひしく、「即ち汝が親ぞ。何ぞも宿さまく欲りせぬ。汝が居める山は、生涯の極、冬も夏も雪霜ふり、冷寒重襲り、人民登らず、御食を奠るものなけむ。」とのりたまひき。更に筑波の岳に登りまして、亦容止りを請ひ給ひき。此の時、筑波の神答へて曰へらく、「今夜は新粟嘗すれども、敢へて尊旨に不奉ひまつらじ」とまをしき。爰に、飲食を設けて、敬拝み祇承へまつりき。是に、神祖の尊、歓然びて謌ひたましく、愛しきかも我が胤巍きかも神宮天地の竝斉日月と共同に人民集ひ賀ぎ飲食富豊に代代に絶ゆること無く日に日に弥栄え千秋万歳に遊楽窮らじとのりたまひき。是を以ちて、福慈の岳は、常に雪降りて登臨ることを得ず。其の筑波の岳は、往き集ひ、歌ひ舞ひ、飲み喫ふこと、今に至るまで絶えざるなり。(以下略く)
※参照:茨城県生活環境部生活文化課HP
エピソード
徳川家光寄進と伝わる神橋
筑波山神社拝殿境内にある「神橋」は、1633年に第三代将軍・徳川家光が筑波山神社を整備した際に建造したものと伝わります。江戸の鬼門を護る神山として神領千五百石を献じたとも伝わっており、筑波山が江戸幕府の庇護を受けていたことが分かります。現在の筑波山神社拝殿は明治期の再建ですが、神橋は家光が建造し、後に第五代将軍・綱吉が改修したものが焼失や廃仏毀釈による破壊を免れ、現存しています。なお、2019年に30年ぶりの修復工事が行われ、日光東照宮と同様に彫刻と彩色で華麗に装飾された神橋が見られます。
古参道「つくば道」
古くからある参道が、「つくば道」として知られています。筑波山の麓にあるつくば市北条地区を起点として拝殿に至る道で、現在は茨城県道139号筑波山公園線がそれを踏襲しています。全区間が日本の道100選に選ばれており、この参道の道中、6丁目に「一の鳥居」が立っています。ここから先は拝殿まで急坂が続いており、坂道途中の集落の一部には白壁と格子の風情ある家並みが続いています。
祭礼・イベント
御座替祭
御座替祭(おざがわりさい)は、毎年4月1日と11月1日の年2回行われる筑波山神社の例大祭です。古くは冬至と夏至に行われており、夏の神と冬の神が神座を交替する神事とされている。祭事は次の3祭からなります。
- 神衣祭(かんみそさい)
山頂本殿の神の衣替えを行う。 - 奉幣祭(ほうべいさい)
拝殿に幣帛を奉納する。 - 神幸祭(じんこうさい)
神衣祭で撤した前期の神衣を神輿に納め、氏子区域を渡御(とぎょ)する。
この祭事の両日は、普段一般の人が渡ることを許されていない「神橋」を渡ることができます。また、現在の神幸祭は一の鳥居までの渡御ですが、明治43年以前は里宮とされる六所神社(廃社)までの渡御だったそうです。里宮と山宮で神が交代するという例は多くみられられ、田の神・山の神の交代による豊穣祈願が根底にあるとされます。
基本データ
名称 | 筑波山神社 |
別称 | |
所在地 | 茨城県つくば市筑波1番地 |
電話 | 029-866-0502 |
URL | 筑波山神社公式HP |
駐車場 | 近隣コインパーキングあり 500円 ※御祈祷者は駐車券を受付に出すと無料に。 |
アクセス | 常磐自動車道土浦北ICより、国道125号線経由約40分 |
アクセスマップ
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